人心が荒む、という言葉があって、私はこれをコロナの今にはじめて実感するような感じがしている。車を停めている駐車場に、ある日警官が立っていた。何かあったのかと遠巻きに観察すると、男の人がうずくまって、「ああ、さっきですよ、もう本当についさっき」と言っている。
どうやら車上荒らしでもやられたのかと思っていたが、横を通るときにふらっと様子をうかがうと、なんと、その車、ナンバーを取られていた。
男の人が「さっき」というのはド日中で、本当についさっきというからには、一瞬の早業で盗まれたということなのだろう。ナンバーを盗んで何をどうするのか知らないが、やはり悪い奴はいる。この話を知人にすると、彼の友人の車も、最近、車のエンブレムを盗まれたらしい。
こういうこと専門にやっている悪い奴らは、ナンバーの封印を外す特殊な工具でも持っているのだろう。エンブレムを外すための道具も。しかし、そんな話、今まで聞いたことがない。もしかすると、このコロナ禍で、悪い奴らの景気も悪いのかもしれない。暇なのか。
それにしてもやっぱり近所にそういうことをする奴らがいるんだなと思うと、少し恐ろしい気持ちになる。夜、駐車場に行くとき、後ろからたぶん同じ駐車場の人なのであろう足音が一定の間隔でついてくるだけでもゾッとしない。女の人はもっともっと恐ろしいだろう。自分が逆の立場になったとき、つまり夜中、女の人の後ろを歩くような感じになったとき、一体どうすればいいか、これもちょっと難しい。