実家で犬を飼っていて、週末に一度会いに行く。
私は本当の名前では呼ばない、いつも自分が勝手につけたそのときの気分の名前で呼ぶ。
最近はある名前がずっとしっくりきていて、その名で呼んでいる。

会うのは週末だけだが、毎日犬のことを考える。それも、自分が気分でつけたその名前を心の中で呼ぶようにして、考える。そのときの犬の反応、名前を呼ぶだけで嬉しい私の感情、次の行動…そういうことを漠然とイメージしながら呼んでいる気がする。

池澤夏樹の「アマバルの自然誌」という本を読んだことがあるだろうか。これはいい本だ。生き物を見て、そのものの名前を考える、ということは、その生き物に対して呼びかけているということだ、というような一文があって、私はそれがすごく腑に落ちた。何かに対して心の中で名前を呼ぶということは、そいつに対する私の期待とか全体のイメージがそこに伴っている。なんというか、イントロドンにも似ている。一秒以下のイントロを聴いただけで音楽全体の主要なイメージがうわっと湧くような。

犬に会っていなくても犬と過ごす毎日を送っている。

カテゴリー: 生活